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神戸地方裁判所 昭和59年(ワ)146号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

一請求原因1項の事実は当事者間に争いがない。

<証拠>によれば、本件墓地を経営する春日野墓協(ママ)会は昭和五六年一月一九日神戸市に対し、墓地、埋葬等に関する法律一二条の規定による管理者として原告を届出していることが認める(ママ)。

なお、筒井村、葺合村、熊内村、中尾村は、神戸市葺合区に編入された後、昭和五五年一二月一日神戸市設置条例の一部改正に伴う区名変更により、同区が同市中央区になつていることは公知の事実であるが、右のように地方自治体の区内編入、区名変更により村名が消滅しても、本件土地は旧筒井村等地域住民の総有に属するものというべく、そして、<証拠>によれば、本件墓地は、権利能力のない社団である神戸・春日野墓地(協会)が経営し、同協会の会長である原告が前記管理者となつていることが認められるから、民訴法五八条により、春日野墓地(協会)が原告適格を有することとなる。

二春日野墓地管理者が、以前から被告の母亡浅田すゑに対して、本件土地のうち別紙目録(1)記載の土地を墓地へ参拝する人のための花の置場として使用させていたことは、当事者間に争いがない。

被告は、右土地の使用関係は賃貸借であると主張する。

なるほど、<証拠>によれば、1 原告管理者植田九郎左衛門と浅田すゑの兄武内辰之助との間で大正二年一月一二日原告管理者は右辰之助に対し、前記(1)記載の土地のうち七五・八〇平方メートル(二二・九四坪)を、その地上に休憩所建築の目的で使用することを承諾する。右辰之助は原告管理者に対し、建物敷地料として一か月一坪当り三銭を支払う旨の契約が成立していること、2 浅田すゑは、その後原告管理者の承諾を得て、右辰之助の地位を承継し、前記休憩所に居住していたことが認められる。

しかしながら、賃貸借とは、賃貸人がある物の使用及び収益をなさしめることを賃借人に約するとともに、賃借人が右使用及び収益の対価として賃料を支払うことを約するによつて成立する法律関係であるところ(民法六〇一条参照)、前記辰之助が大正二年一月一二日原告管理者に対し支払うことを約した一か月坪当り三銭が前記契約土地の使用、収益の対価として相当であつたとの証拠がないのみならず、<証拠>を総合すれば、(一) 前記土地の貸主は墓地管理人、借主は墓地番人という特殊な関係にあり、したがつて前記契約において、前記辰之助が建築した休憩所は、墓参者の休憩、墓地番人の居住の目的とすることに限定されていたこと(二) 浅田すゑが原告管理者に対し、前記土地の使用料として支払つている金員は、昭和四〇年当時年二〇〇〇円、その後昭和五三年まで年四〇〇〇円、昭和五四年から昭和五八年まで年六〇〇〇円(月当り五〇〇円)に過ぎず、右金員は、当時の経済事情、近隣の賃料と比較して著しく廉価であり、原告管理人は、本件土地使用に対する謝礼の意味に解して右金員を受領していたものであることが認められ、右(一)、(二)に認定の事実を総合すれば、前記辰之助、浅田すゑらが原告管理者に対し支払つていた、一か月坪当り三銭、年二〇〇〇円ないし六〇〇〇円は、いずれも前記土地使用の対価というよりは、賃借当事者間の特殊関係に基づく謝礼の意味のものとみるのが相当で、賃料ではなく、原告管理者と前記辰之助その承継人である浅田すゑとの間の前記土地に関する契約は使用貸借であつて、賃貸借ではないと解すべきである。

三<証拠>を総合すれば、浅田すゑは昭和五八年四月一二日死亡したことが認められ、それによると、原告管理者と浅田すゑとの間の別紙目録(1)記載の土地についての前記使用貸借は、民法五九九条により効力を失つたものというべきである。(広岡 保)

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